K100%オブジェクトが透けちゃう!防止策に使えるリッチブラック

Illustratorでデータを作成して、画面上では問題なかったのに印刷してみるとK100%の塗りの下のオブジェクト透けていた!という経験はありませんでしょうか?

K100%が透けて見える

これは、一般的にK100%のインクには、自動的にブラックオーバープリント(墨ノセ)という処理がされるために起こるもの。>

下に配置しているカラーの上にK100%を重ねて印刷するので、前面にある色と背面にある色が混ざり、背景が 透けてしまうために起こります。

この対策として、透けたくない黒の部分を墨ベタ(K100%)ではなく、リッチブラックを利用したり、何か他のインキを1%でも混ぜたり、Kを99%にしたりすることで回避されます。

リッチブラックとは?

リッチブラックのメリットと4色ベタ

黒を表すときは、通常ブラック(K)で表現しますが、他の色を混ぜることでより深みのある黒を表現することが可能です。

このKと他の色を混ぜた 深みのある黒のことを、リッチブラックといいます。

また、冒頭にも書きましたが、オーバープリント対策としてもよく用いられます。

しかし、色を重ねると深みが出る!と言ってもCMYK全ての色の数値を上げれば良いわけではありません。

CMYK全てが100%の状態は4色ベタ」と言われ、インクを大量に使用するため、裏写りや紙同士のくっつきの原因になり、多くの印刷会社で推奨されていません

オーバープリントの推奨値は印刷会社によって異なます。
多くの場合はデータ作成ガイドなどに推奨の記載があるので、それに沿って利用しましょう。

黒の違い

トンボに利用される4色ベタ。データそのものには使わない…と覚えておきましょう。

リッチブラックのデメリット

オーバープリント防止に使えて、黒に深みを与えてくれるリッチブラックですが、以下のようなデメリットもあります。

  • 細い線や、細かい文字などに使用すると版ズレのようになり滲んで見えることがある
  • 範囲が大きくなると、インク使用量が大きくなり、印刷物が乾きにくくなる恐れがある
版ズレのイメージ

リッチブラックは細い線や字には不向き。

例えばQRコードなどをリッチブラックで色指定し、版ズレの状態になると読み込みができない状態になることも予想されます。

また、リッチブラック非推奨の印刷会社もあるので、記載がない場合は一旦問い合わせをするのをお勧めします

リッチブラック4社比較

今回は、4社の印刷会社で推奨のリッチブラックを使用し、オンデマンド印刷の仕上がりを比較してみました!

全く同じ用紙…ではないですが、なるべく似た用紙で比較しています。

利用したのはこちらのデータ。

使用データ

リッチブラックのみは各社で推奨値で入稿しました

黒ラインは、上から

  • 1. K100%
  • 2. C1% M0% Y0% K100%(オーバープリントで黒に何か色を1%のみ足したもの)
  • 3. 各社の推奨リッチブラック

で指定しました。

画面で見た限りではどれも同じ黒に見えますね。

ちなみに、Illustrator上で各オブジェクト「塗りにオーバープリント」のチェックはしていない状態です。

東京カラー印刷

東京カラー印刷の推奨値はC50% M50% Y50% K100%

東京カラー印刷のリッチブラック比較

用紙はマット紙 180kg。

K100%のところは背景の色がどの色もはっきり透けてますね。

C1%を足しただけでも、K100%に比べて色味がぐんと濃くなったような印象を持ちますが、よりK100%の黒に近い色を目指すならリッチブラックでしょうか。

用紙の色の干渉もあるかもしれませんが、4社の中では一番赤みがある黒という印象を受けました。

東京カラー印刷のサイトへ

ラクスル

ラクスルの推奨値はC50% M40% Y40% K100%

ラクスルのリッチブラックと黒の比較

用紙はマット紙180kg。比較的青みが強めの白色用紙です。

こちらも目視だと、K100%の部分は下の柄がはっきり透けており、4社の中では一番透けていました。

色味はとても安定しており、K100%とリッチブラックの差が「そのままインクの濃さだけ変えました!」というくらい似た色調になっています。

ただし、ラクスルは自社印刷ではないため、毎回同じような表現になるかがわからないところが注意したいところ。

ラクスルのサイトへ

グラフィック

グラフィックのリッチブラックの推奨はC60% M40% Y40% K100%

グラフィックのリッチカラーブラックの比較

用紙はマットコート180kg。しっとりとした白色用紙です

目視で三種のブラックの差が一番なく、またブラウザカラーに一番近い結果となったのがグラフィックでした。
K100%のみでも十分に黒の発色の良さを感じましたが、更にリッチブラックは深みをましています。
しかしながら、これはもう余程注目しないとわからないのでは?という域です。

オーバープリント対策であれば、リッチブラック指定をするよりもK100%に近い数値を指定したほうが版ズレなどのリスクが低そう。

また、通常オーバープリント処理があるはずですが、今回はオーバープリント処理はされてませんでした。

グラフィックのサイトへ

アドプリント

アドプリントの推奨値はC30%M30%Y30%K100%

アドプリントのリッチブラック

用紙は用紙はマットコート258kg。グラフィックのものと同じ種類の用紙です。

アドプリントのサイト上の情報では、オーバプリントされるという表記になっていましたが、今回はオーバープリントされていませんでした。

今回、リッチブラックの効果がはっきりと現れているように感じたのがアドプリント。
K100%のみの黒に比べ、リッチブラック指定黒はしっかりと奥行きを感じられる黒になっています。

しかし同時に、上にかかっている白文字の部分に版ズレが起きて若干潰れて読みにくくなっており、「リッチブラックは版ズレすると読みにくくなる」というデメリットもはっきりわかる結果になりました。

ちなみに、C1%プラスの黒線は版ズレが目立っていません。

アドプリントのサイトへ

また、今回のグラフィックやアドプリントでオーバープリント処理がなされなかったように印刷会社さんによっては、オーバープリントによるトラブル防止のために全てのオーバープリント設定を破棄して印刷する会社さんもあるようです。(例:プリントネットなど)

オーバープリントを生かしたデザインをしたい場合などは事前に確認を取ったほうがよさそうですね。

非推奨の場合もあり。リッチブラックを利用の際は印刷会社さんに確認を!

実際に比較してみると、各印刷会社さんでリッチブラックの推奨値や、オーバープリントの有無も含め実際の仕上がりにかなり違いがありました。

また、一つの印刷会社さんの印刷物を見ても、同じ黒でも指定の値が違えば違う黒になる!ということが目に見えてわかります。(たまに印刷物の黒の色味が違う!?といったミスをするのはこれですね…。)

ラクスル・東京カラー印刷・グラフィック・アドプリントの比較画像

ラクスル・東京カラー印刷・グラフィック・アドプリントの比較画像

また、今回作成時に筆者が調べたところ、リッチブラック非推奨の印刷会社さんも多々ありました。

インク量が多くなる手法のため、黒ベタ範囲が多くなる部分には不向きであることや、版ズレなどのリスクがあることも踏まえ、リッチブラックを利用したデータを作成したい場合は、一度問い合わせをしたり、推奨値の表記がある印刷会社さんを利用しましょう

好みのリッチブラックが表現できる印刷会社さんを見つければ、印刷物のデザインをより思い通りに作成できそうです。その際は、インクの合計濃度が印刷会社の指定数値を超えないこともお忘れなく