印刷通販が安価に商品提供ができる理由 その2:用紙調達の工夫
最終更新日: 2018年08月08日
前回は印刷通販がなぜ一般の印刷会社より安価に商品の提供ができるのか、その理由について「面付け」の工夫という点から解説し、そのメリットとデメリットについても説明しました。
今回は、印刷通販は一般的な印刷会社よりも安い値段で商品を提供をできるかについて、もう一つの大きな要因である「用紙調達」の工夫という側面から解説しましょう。
よく使われる紙種・厚さ(連量)の用紙を大量に仕入れる
印刷に使用される印刷用紙にはいろいろな種類があります。
印刷通販でよく利用されるチラシ・フライヤーやパンフレットには、上質紙と、上質紙の表面に白い薬品が塗工されているコート紙(A2グロスコート)、つや消しのマットコート紙(A2マットコート)などの用紙がよく利用されます。名刺やポストカードなどのようにやや厚めの印刷物には、これらの用紙に加えてアートポストというやや厚めのコート紙が利用される場合が多いです。
印刷用紙の厚さにも多くの種類があります。
印刷を発注する際には、用紙の厚さを90kgや110kgというような単位で注文したことがある方も多いでしょう。
この〇〇kgというのは、その用紙が四六全判(788×1091mm)1000枚分でどれだけの重さなのかということを表し、この重さで紙の厚みも表しています。この単位のことを「連量(れんりょう)」といいます。なぜ1000枚を単位にするかというと、用紙の発注は一般的に1000枚を単位として扱うからで、この1000枚を1R(連・れん)といいます。連量という単位もそこからきているのです。
この連量の中でもとりわけよく使われるのが90kg・110kg・135kgの3種です。アートポスト紙の180kgや220kgなどの連量も比較的よく利用される種類です。
印刷通販では、このようによく利用される種類の用紙の、よく利用される連量のものを、事前に大量に仕入れておくことで用紙価格を安価に抑えています。
一般的な印刷会社の場合、ある程度の量を仕入れて在庫を抱えてはいますが、基本的には印刷物の発注に合わせて用紙を発注する場合が多く、これが印刷通販と一般的な印刷会社の大きな違いといえます。
用紙の銘柄を限定しないことで、発注に柔軟性を持たせる
一般的な印刷会社の場合、先の通り印刷の発注に応じて用紙を発注する場合が多く、この際には製紙会社や紙問屋に対し、用紙の個別の銘柄を指定して発注するのが一般的です。つまり、私たちが印刷通販でオーダーするように「コート紙、〇〇kg」と大まかな種類で発注するのではなく、「三菱製紙のホワイトニューVで」といった形で具体的な銘柄を指定するのが一般的です。
印刷通販の場合、このように銘柄指定ではなく、上質紙・コート紙・マットコート紙といった、大まかな種類で印刷発注を受けます。個別の銘柄指定で在庫を維持すると仕入れの効率が悪く、価格も高くなりがちなので、その時々に安価な用紙を大量に仕入れるのです。このため、どの銘柄を使っているかはユーザーにはわかりません(もちろん、1回のオーダーの中で用紙が異なると印刷の結果も変わるので、異なる銘柄を混ぜるということはありませんが)。
印刷通販のユーザーはどちらかといえば品質よりも価格を重視する場合が多いので、特定の銘柄にこだわるよりもこの方がよりニーズに応えられるといえます。もちろん印刷通販の会社でも特定の銘柄を取り揃えている会社もありますが、その場合はやや割高になりがちです。

用紙仕入れを効率化することによる印刷物ユーザー側のデメリット
用紙の種類や連量が制限されることのデメリットとしては、他の種類や連量の用紙のを利用したい場合には、単価的にはかえって一般の印刷会社より割高になる可能性がある点を挙げられます。
またそもそも、一般的な紙でない、たとえばファンシーペーパーのような用紙を使いたい場合には、その用紙が準備されていない可能性もあります。とはいえ、印刷通販の会社の中でも、低価格の追求が第一の会社もあれば、用紙の種類を豊富に用意することを個性にしている会社もあるので、大方のニーズには対応できているといえるでしょう。
銘柄が指定できないことのデメリットとしては、印刷の色が一定になりにくいという問題があります。例えばコート紙といっても、製紙各社の銘柄によって紙の色が微妙に異なります。白い紙といっても、青みの強いもの、黄色みの強いもの、赤みの強いものなどの個性があり、この微妙な色味が印刷の色に影響を及ぼすのです。単発の発注ならば色の微妙な違いが気にならなくとも、増刷のように再印刷を繰り返す場合は、その際に使用する紙が異なれば印刷の色味も変わってしまう可能性があるのです。

今回は印刷通販が安価に提供される理由として、用紙調達の面から解説してみました。次回はそれ以外の印刷通販ならではの特徴について紹介したいと思います。
(執筆者:will be will be ヤナギダヒロユキ)