「孔版印刷」をご存じでしょうか?
現在の印刷会社で主流のオフセット印刷やオンデマンド印刷とは全く異なる、版画やシルクスクリーンに近い刷り方をする印刷方法です。
使用するインクもオフセット印刷の油性とは違い半水性で、そのため完全に乾燥することはなく手につきやすかったり、色にむらやかすれが出たりする場合もあります。
でも、そんな風合いこそが孔版印刷の味わい。大阪に本社を持つレトロ印刷JAMは、孔版印刷の魅力を伝え続ける印刷会社で、印刷通販対応も行なっています。

今回は、そんなレトロ印刷JAMで孔版印刷の試し刷りをしたレビューをお届けしますね。

レトロ印刷JAMの孔版印刷は試し刷り可能!

新しい印刷方法や紙種にトライする時、試し刷りできると安心しますよね。
特にこの孔版印刷は、一色ずつ刷り重ねていく印刷の特性上どうしても版のずれやインクの混色が生じやすく、初めての注文では印刷データを作る際も「構図や濃度は大丈夫かな」と不安になるものです。

レトロ印刷JAMではそんな人のために、ネット印刷で発注できる試し刷りサービスを実施しています。

試し刷りサービスのうち、「ペラ紙と厚紙の試し刷り」では、ペラ紙なら紙種3枚まで・厚紙は1枚の試し刷りができます。ラインナップの中から好きな紙種を選べて、インクの刷り色も34色からチョイスすることが可能

インクは1色追加するごとに料金加算されるシステムで、最大で片面7色・両面印刷の場合は表5色裏3色まで指定できますが、色数が増えるほど混色や裏うつりが強くなっていくため、それ以上は不可能となります。

 

孔版印刷データの作成方法

孔版印刷データの作り方は、やり方がわかれば簡単にできます。
レトロ印刷JAMでは基本的に、IllustratorのAiデータ入稿を推奨していますが、PhotoshopなどのPSDやPDF、Jpegデータでも大丈夫ですし紙原稿でのアナログ入稿も可能。2020年からはCLIP STUDIOでの入稿データ作成方法も解説されています。
データ入稿向けにAi 形式とPSD形式のテンプレートもあるので、作りたい印刷物のサイズに合ったテンプレートを使い、データを作ると安心ですね。

今回の試し刷りでは、手軽にPhotoshopで印刷データを作成してみました。

 

印刷データの作り方としては、まず画像解像度は300dpiから350dpiまで。孔版印刷ではこれ以上の解像度があっても表現できません。
また、カラーモードは必ずグレースケールとすること。あとは刷りたい色ごとにデータを分け、1色につき1データ用意します。つまり、孔版印刷のデータの作り方は、オフセット印刷やオンデマンド印刷で多色刷りをする時とほとんど同じです。

今回は片面3色の試し刷りを行なうので、3つのデータを作りました。
B5 横の孔版印刷レターペーパーを作るべく、このような完成形にしたかったので、

インクは茶・緑・朱の3色を選び、「茶」のインクのデータ、

「緑」のインクのデータ、

「朱」のインクのデータ、と3つのデータを作成します。

あとはわかりやすいように、各データのファイル名を刷り色の名前にしてPSD保存し、出力見本画像をPDFかJpegで添えて、一つのファイルにまとめてZip圧縮すれば入稿準備完了です。

試し刷りを申し込む

レトロ印刷JAMの試し刷りは、試し刷り用フォームから申し込みます。
希望サイズや納品方法・支払い方法などを選択・記入する他、印刷物の仕上がりで心配な点なども記入すると「赤ペンサービス」で返答してもらえます。

試し刷りで希望したい用紙は3種類までフォームから指定できますが、ペラ刷りでは36種類の紙から選べるのでじっくり迷いましょう。紙種の特徴はレトロ印刷JAMサイトで詳しく説明されています。
今回は、レトロ紙-Aハトロン紙(表ざら/裏つる)・そして限定紙のコニーラップ-グレーをセレクトしました。

納品方法は、料金がかかるけれども日時指定可能な宅急便か、送料無料で日時指定不可の日本郵便ゆうパケットから選択できます。
支払い方法は銀行振込かクレジットカード決済のどちらかとなりますが、近い人はレトロ印刷JAMへ行って完成品の引き取り・その場で支払いも可能です。

 

試し刷り用フォームから必要事項を送信するとすぐデータ入稿ページが開くので、事前に入稿準備を整えておくことをおすすめします。
入稿完了後は自動返信メールが届き、今回はその翌日、データチェック完了メールも来ました。
データチェックが終わってからは、データ差し替えや注文内容の変更・キャンセルができなくなるため、よく確認してから入稿しましょう。

 

また、今回は銀行振込・ゆうパケット送付で試し刷りを依頼しましたが、入金確認のメールとゆうパケット伝票番号つき発送通知メールはそれぞれ別途に届きました。
納期はサイトの記載通り、3色刷りで2日後発送でした。

 

試し刷りの結果は……!

ゆうパケット送付だったため、大阪府のレトロ印刷JAMから北海道の筆者宅まで4日要しましたが、無事に到着しました。
このような封筒で届きます。

封筒も孔版印刷!
開封すると、こちらも孔版印刷のチラシやお知らせがたくさん。印刷見本としても使えますし、眺めているだけでも楽しいですね。

そして肝心の試し刷りですが、選んだ紙種3種類で、今回はそれぞれ4枚ずつ刷っていただけていました。

試し刷りに関してと孔版印刷については、別紙で仔細に解説されています。

今回は試し刷り入稿の際、データの濃度について質問していたので、濃淡差に関してなどお答えくださっていました。お安い試し刷りでありながら、とても丁寧な対応で嬉しくなります。

試し刷り結果を紙種別に詳しく見ていきましょう。まずはレトロ紙-Aから。

この紙は、ざらざらした質感の素朴さが味の印刷用紙です。毛羽立ったような感触のため、細かな濃淡は見えにくいですが、そこがまたレトロでかわいいですね。

アップで見るとこのような、少しぽそぽそとした質感です。

裏移りの具合はこのくらい。厚い紙ではないので、細い線まで裏にしみています。

 

次にハトロン紙(表ざら/裏つる)です。

これは表と裏で感触の違う紙ですが、印刷はざらざらの表面にします
アップで見るとこうなります。

レトロ紙-Aよりは、微細な濃淡も反映されていますね。

 

ハトロン紙の裏うつりはこういった感じです。白色ベースの紙ということもあり、かなりくっきり裏にしみます。

 

そして新しい印刷用紙のコニーラップ-グレーです。

どの紙種でも、こうして断裁前のトンボありの状態で見ると、孔版印刷で版を重ねるごとにどれくらい版ずれが起こるかよくわかりますね。

コニーラップ-グレーの試し刷りをアップで見るとこうなります。
この紙種は質感が平坦でなめらかなため、今回試し刷りした3種の中ではもっとも細かい濃淡も出ていました。

コニーラップ-グレーの裏うつり具合はこの程度。
今回試し刷りした3種の中では一番厚みのある紙なので、当然裏移りは控えめになります。

 

レトロ印刷JAMのサイト上でインクや紙を見ているのも楽しいですが、こうして実際に試し刷りをしてみると、孔版印刷の特性がわかってさらに面白くなると思います。

紙とインクの組み合わせを工夫し、オリジナリティに富んだ印刷物を生みだすことができる孔版印刷、ぜひ試してみてくださいね。